山梨県甲府市小瀬町の歯科

日本口腔インプラント学会認定講習会 東京形成歯科研修会2025年5月

2025/06/04

東京形成歯科研修会主催の日本口腔インプラント学会認定講習会にご参加の先生方、長時間ご苦労様でした。日本口腔インプラント学会専門医を目指してしっかりと聴講され、積極的にハンズオン実習を受けて頂き、演者としてはとても感謝しております。

日本口腔インプラント学会認定講習会 東京形成歯科研究会

日本口腔インプラント学会認定講習会が東京形成歯科研究会主催で5月、御茶ノ水で開催されました

相澤の担当は静的ナビゲーションシステムであるガイデッドサージェリーの部門を担当させて頂きましたが、広範囲にわたる内容でもあり、多岐にわたる質問が出ました。
今後も活発な議論を会員の皆様としていきたいと思います。

日本口腔インプラント学会認定講習会 東京形成研究会2025年5月

実習機材が限界数の研修会会場風景

 

日本口腔インプラント学会認定講習会 東京形成歯科研究会2025年5月

日本口腔インプラント学会認定講習会 会場は御茶ノ水

いくつか質問のお答えの一例として、記しておきます。

はじめに

先日は、東京形成歯科研究会の研修会と実習に参加して頂き感謝しております。1日コースの研修会とはいえ、インプラント治療の本当に僅かな一部分しか解説できていません。私は、東京形成歯科研究会の会員ですのでいつでもお声をかけて頂ければ幸いです。

また、受講生にとってインプラント治療に大切な講義が素晴らしい講師人によって10カ月続きますのでしっかりと聴講して頂き、ご自身のものにして頂きたいと思います。

さらに、アドバンスな部分に関してはぜひ東京形成歯科研究会に参加して頂いてお互いに学び合う機会をお待ちしております。

[事後質問1]

今後GBRをする際は、バイオスは使用可能との認識でよろしいでしょうか。

[質問に対するご回答]

GBRに関しては、認可がおりました。このため、GBRに関しての使用は問題ないと思いますが、GBRとインプラント同時埋入関しては、詳細が公開されていませんので、不明であります。また、現時点で日本口腔インプラント学会の方の見解が紹介されていませんが、今後掲載されると思いますので注視して下さい。

 

[事後質問2]

シンプラントで設計したデータからSTLデータを自分のパソコンに保存できるのでしょうか?設計したガイドを3Dプリンタがあればガイドを製作できるのでしょうか?

[質問に対するご回答]

残念ながら、シンプラントでは不可能です。問い合わせしてシンプラント日本責任者から正式に回答を得ましたので以下に記します。

「ご質問の件ですが、シムプラントは東京工場でのガイド製造のみに対応しております。シムプラントからのSTL出力や3Dプリンタでのガイド作製には対応しておりません。 将来的には対応の可能性はあると思いますが、現時点では対応不可能が返答になります。申し訳ありません。」

ファイル形式がシンプラントオリジナルになるものですので、それを改変することは、またその作業はかなり難しく、違法であることをご承知おきください。

 

[事後質問3]

①最後方臼歯は単独補綴のほうがリスクが低いのはセメンテーションの場合の話でしょうか?

②また単独のほうが咬合調整が簡単、というのは最終補綴のタイミングをずらすから、という事でしょうか?

[質問に対するご回答]

① 最後後方歯を単独補綴として薦めるのは、あくまでも欠損歯数や欠損領域によりますが、私の拙い学んだ知識や臨床感によります。

最後後方歯は、天然歯であってもトラブルを起こしやすいことが知られています。咬合力がかかりやすく、摩耗が多く生じやすかったり、インプラント体の破折等が生じやすいだけでなく、インプラント支持骨の喪失やインプラント周囲炎が生じやすくなっております。

当院では、極力すべての患者様に定期的にメインテナンスを行うようにしておりますが、トラブルを早期発見しやすく、トラブルに対して、コスト面を含めて対応しやすいことから、スクリュー固定、セメント固定に拘わらず、最後後方歯は単独補綴を行っております。

②単独補綴にしたから、咬合調整が簡単という事はございません。また最終補綴の時期をずらすような治療は特殊なケースを除いて行っておりません。

現在のような比較的硬度が適切なジルコニアが出現する前には、本当に色々な素材が試されました。デジタル化された現在、特にIOSを随所に使用することで装着時の咬合調整は、ほとんどなくなりました。しかし、対合歯が天然歯であった場合、経年的な変化を考慮し定期的な咬合を確認する必要があります。

 

講演会で、回答した内容ですが、一例として、7654(4本)欠損であれば、インプラントの場合、補綴的に連結せずとも、3本の植立でも十分可能な上部構造ができることが多いかと思いますが、インプラント補綴においても4本のスペースが必要な場合であって、⑦⑥5④の連結の上部構造とするよりも、7は単独として、⑥5④の2本のブリッジとしています。

これは、3本連結した時に、真ん中のインプラントの骨吸収が生じやすいという論文が多数存在しているからですが、これは、咬合による上部構造の撓みの結果と考えられています。しかし、メーカー純正のカスタムアバットメントを用いて、Zrのワンピースの上部構造とした場合には、歪みは、かなり抑制されると考えられますから、今後の臨床研究を待ちたいところです。

また、コストの問題で考えてみますと、単独補綴の方がトラブルシューティングしやすく、再製作が簡単になります。4本欠損を2本のインプラントで補綴した場合、大変な設計変更やコストが発生することになります。

一方、今回の講演でスライドは作製しましたが、時間の関係で開設できなかった論文があります(インターネットでダウンロードできます)。

インプラント上部補綴構造は、どの選択が良いのか?

Should the restoration of adjacent implants be splinted or nonsplinted? A systematic review and meta-analysis

Victor E de Souza Batista et.al. J Prosthet Dent.121 (1):41-51,2019.

研究の目的:インプラントの上部構造設計にあたり、スプリントタイプとするか単独で修復するかの決定は、治療状況のリスクとベネフィットを考慮し、診断の段階で行われるべきである。しかし、歯科医師が治療計画時に設計の是非を判定するための臨床的証拠は十分でない。このことから、本研究では系統的レビューとメタ分析により、スプリントおよび非スプリントインプラント修復における辺縁骨損失、インプラント生存率、および補綴合併症を評価している。

結果:すべての研究の定量的分析では、スプリント修復の方が非スプリント修復よりも統計的に有意に高い生存率を示した。補綴後の合併症では、セラミックの欠け、ネジの緩み、アバットメントネジの破損、および軟部組織の炎症が報告された。定量分析では、スプリント修復と非スプリント修復の補綴合併症に統計的に有意な差はなかった。

結論:本研究ではスプリントを使用したインプラント修復とスプリントを使用しないインプラント修復の辺縁骨損失と補綴合併症に差がなかった。ただし、スプリントを使用した修復ではインプラントの喪失の減少が認められた。

考察:このことから予知性の観点から、インプラント補綴上部構造はスプリントタイプの選択が好ましいと思われる。

この論文では以上のような結論になっていますが、術者が異なるだけでなく、多岐にわたる条件、毎年アップデートされる製品群を考えると、システマティックレビューであっても、まだまだこれからの分野であり、どのような方向性になるかはAIなどの利用によって確実性の高いエビデンスが報告されると思います。

 

[事後質問4]

重度Pの患者様のインプラントの診断について気になりました

[質問に対するご回答]

重度の歯周病の治療は本当に難しい課題と思います。残念ながら、本講演では歯周病とインプラントがテーマではございませんでしたので、歯周病に関しては、午前中の最初の2例でケースプレゼンテーション作りのための資料として歯周組織の状態の記載方法を紹介しただけです。

具体的には、年間スケジュールで11月になりますが毎年、歯周病治療で有名な先生が素晴らしい講演をして頂けるので、楽しみにしていて下さい。

では、実際に当院の歯周病治療についてお話しします。当院は地方のとてものんびりした場所にあるため、インプラント埋入手術前に全例において、最低でも歯周病中期治療を行っており、PCRも20%以下であることを条件としております。このため、初診から最低半年以上、場合によっては2年以上経過してから手術にすることがあります。リグロスや骨補填材を利用した歯周再生療法を含めた歯周外科治療やブルーラジカルなどの非外科歯周病治療にも取り組んでいます。本講演の中で一番重度の歯周病の方で、両側サイナスリフトの症例を出させて頂きましたが、2年間以上歯周病治療のみを行い、何度もコンサルを繰り返してから手術に入りました。上部装着後も、ずっと毎月メインテナンスで受診されています。参考までに、術前・術後のX線写真を提示しましたが、天然歯である33(左下3)部の歯槽骨の大幅な再生を見て頂けたでしょうか?

山梨県ではインプラント治療はもとより、専門的に歯周病治療を行う医院は比較的少ないこともございまして、インプラント治療が完了後もずっと定期的に来院されることが多く、口腔内を長きにわたってずっと管理させて頂けるのも地方の良い点だと思っております。

 

[事後質問5]

インプラント埋入時には足のペダルは間歇的に踏んだほうがよいのでしょうか。

[質問に対するご回答]

埋入窩がしっかりと形成されている場合や埋入深度が決定できる場合は、間歇的に埋入すべきではないと思います。インプランターのトルクによりますが、骨が固い場合スタックすることがあります。

逆に、骨が柔らかく変位しやすい場合やサイナスリフトを行っていて、埋入深度 の変更や微調整が必要な場合では、間歇的にトルクをかけながら、意図的に食い込ませて埋入することもありますが、比較的少数かと思っております。

[事後質問6]

①バーチャルワックスか技工士にワックスアップを作ってもらうかの判断はどの様にしていますか。

②IODのロケーターは低い方がいいのはなぜでしょうか。

[質問に対するご回答]

① 咬合面の変更が大きい場合、対合歯の咬合を著しく変化させたい、せざるを得ない症例は絶対です。講演会でも解説しましたが臼歯部で数本以上の欠損では、既に補綴されていたり、咬耗していたり、結節などの歯冠形態が異なることが多いので、技工士によるワックスアップをお勧めしますが、パートナーとなる技工士を探し一緒に仕上げていくような状況を作っていく事が大切かと思います。

 

② ロケーターのマニュアルを見ますと、歯肉縁から1.5mm以上の高さが必要と書かれています。Supracrestal Tissue Attachment(骨縁上上皮付着)として考えますと、ロケーターの高さは縁から3mm以上が理想的ですが、逆に5mmとしてしまうと、経年的に着脱時に破折してしまうことを良く経験しています。特に平行性が難しい上顎では多いです。ロケーターインサートメールの変形を見ながら判断して下さい。

結論としては、歯肉が厚く、変位が多い方では4mm、一般的な歯肉の場合には3mmにしておいた方が良いと思います。ご存じだと思いますがIODの方で歯肉が薄くてという方はほとんどいらっしゃいません。

 

 

 

 

 

 

 

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